座標軸の取り替え
目標。座標軸を取り替えるためにはどうすればよいかを整理する。
いま考えている 次元線型空間 の基底を とする。この基底をまた別の の基底 に取り替えたい。
3次元の空間だとイメージしやすい:
任意の は と表せる。この式を、 を たちで測ったものだとみる。では、 たちで測れば はどう表されるのか?
先の は
と表せる。この を、基底 に関する の第 座標という。しかして、これらを直積の形で表したもの:
または
を、基底 に関する の座標、または座標ベクトルという。
つまり座標という概念は、基底を定めてからはじめて決まるものであって、どの基底において話を進めているのかはつねに意識する必要がある。大抵の場合は自然基底であることが多いのだが、たとえば、単に
とか、
とか書いただけでは、どの基底で測って なのかが分からないから、結局何も言ったことにならない。これは、例えるなら、現実でなにか、ものの長さを測って だったとして、それを人に伝えるときに、単に 「あ、 だった」と言っても、単位が分からないのだからこの数字は何の意味もなさない、というのと似ている。
座標は、基底の明記があってはじめて意味を成すのである。
とはいえ、逐一基底を明記しなければならないというのは面倒のそしりを免れない。先の例でいえば、伝達された相手が、そのものの大きさをだいたい知っていれば、メートルの単位がなくても必要な情報は伝わるだろう。
そこで、明らかに基底がわかる場合にはこれを省略してもよいことになっている。ただ、繰り返しになるが、基底の意識はつねにもっておく必要がある。これを忘れると、いま自分が何をやっているのか、何を伝えたいのか、分からなくなる。
なお、基底 などどいうと順序も考慮に入れねばならないというが、それは、順序を変えてしまうと、それに付随する座標も変わってしまうことに由来している。
話を戻そう。ところで、この たちは の元だから、これらを たちで表すことができる:
これらはまとめて、
とかける。 と たちの関係をみたいのなら、 を に代入すればよい。すなわち、
をうる。この式から、基底 に関する の第 座標が であることが分かった。
そこで、ここに出てくる たちの行列が問題になってくるが、これは たちと たちについての情報がないと分かりようがない。しかし、実用上、変換前の基底は自然基底であることが多いから、ここでは たちを自然基底に取って進みたいと思う。このとき、 の左辺は単位行列 となり、 は正則だから、先の たちの行列は の逆行列となる:
さて、自然基底 から基底 への変化で、座標がどう変わるのかをみたいのだった。右から を掛ければ、
つまり、旧基底で測った
と、新基底で測った
が同じ点を表す。
この新基底での座標を とすれば、
これが求めたかった式である。つまり、自然基底においての座標ベクトルに対して、変換基底を並べた行列の逆行列を左からかけることで、変換後の新基底での座標ベクトルを得ることができる。