而して

ノートとかメモとか。

線形代数

この二ヶ月で, 線形代数についてたくさんのことを学んだ. そこで, 備忘録および理解の確認を兼ねて, 得たものをいちど書き出してみようと思う. 

簡潔化の為, あえて証明はしない. 淡々と事実だけを述べていくし, また, いちいち文字を定義しなおすこともしない.  

部分ベクトル空間.   V線型空間とし,  K を数体とするとき, 次の条件を満たす  V の部分集合  W部分ベクトル空間という: 「任意の \boldsymbol{a}, \boldsymbol{b} \in W \lambda, \mu \in K について,  \lambda\boldsymbol{a}+\mu\boldsymbol{b} \in W. 」

基底.  W は部分ベクトル空間とする.  \boldsymbol{b _ 1}, \cdots, \boldsymbol{b _ k} が線型独立であって, 任意の  \boldsymbol{x} \in W \boldsymbol{b _ 1}, \cdots, \boldsymbol{b _ k} の線型結合でかけるとき,  \boldsymbol{b _ 1}, \cdots, \boldsymbol{b _ k}基底といい,  \langle \boldsymbol{b _ 1}, \cdots, \boldsymbol{b _ k} \rangle と表わす. またこのとき,  W \boldsymbol{b _ 1}, \cdots, \boldsymbol{b _ k}張られるという. 

とりかえ定理によって, 部分ベクトル空間の基底の本数は一定であることが証明される.

次元.   W \boldsymbol{b _ 1}, \cdots, \boldsymbol{b _ k} で張られるとき, その基底の本数  k次元といい,  \dim{W} で表わす. 

次元定理.  W _ 1, W _ 2を部分ベクトル空間とするとき,  \dim{W _ 1}+\dim{W _ 2}=\dim{(W _ 1 + W _ 2)}+\dim{(W _ 1 \cap W _ 2)}. とくに,  W _ 1, W _ 2が直和条件を満たすならば,  \dim{W _ 1}+\dim{W _ 2}=\dim{(W _ 1 \dot{+} W _ 2)} であって, 逆も成り立つ.

線形写像の次元定理.  \varphi n 次元ベクトル空間  V _1 から  m 次元ベクトル空間  V _ 2 への線形写像とすると,  \dim{\ker{\varphi}}+\mathrm{rank}\ \varphi=n.

線形写像 写像  \varphi が次の条件を満たすとき, 線形写像であるという: 「 \varphi(\lambda\boldsymbol{a}+\mu\boldsymbol{b})=\lambda\varphi(\boldsymbol{a})+\mu\varphi(\boldsymbol{b}).

像.  集合  \{\varphi(\boldsymbol{x}); \boldsymbol{x} \in \boldsymbol{K} ^ n\} \varphiといい,  \mathrm{Im}\ \varphi で表わす. 線形写像の像は部分ベクトル空間である. 値域ともいう.

核. 集合  \{ \boldsymbol{x}; \varphi(\boldsymbol{x})=\boldsymbol{o} \} \varphiといい,  \ker{\varphi} で表わす.

全射, 単射, 双射.  \varphi \boldsymbol{K} ^ n から  \boldsymbol{K} ^ m への線形写像とする.  \mathrm{Im}\ \varphi \boldsymbol{K} ^ m 全体であるとき,  \varphi全射といい,  \boldsymbol{K} ^ n の異なる元が  \varphi で写されても必ず異なるとき,  \varphi単射であるという. 全射かつ単射のとき, 双射であるという.

階数.  像の次元を階数といい,  \mathrm{rank}\ {\varphi} で表わす. すなわち,  \mathrm{rank}\ {\varphi}=\dim{\mathrm{Im}\ \varphi} である.

正則.  線形写像  \varphiが逆写像を持つとき, すなわち,  \varphi\psi=\psi\varphi=I なる  \psi が存在するとき,  \varphi正則であるという.  \varphi が双射ならば, 逆写像が存在するから正則である.

正則に関する同値条件. 次の三つの条件は互いに同値である:「線形写像  \varphi単射である」「 \ker{\varphi}=\{\boldsymbol{o}\}」「 \varphi \boldsymbol{K} ^ n の任意の線型独立なベクトル列を  \boldsymbol{K} ^ m の線型独立なベクトル列へ写す」

さらに,  m n であるとき, 「 \varphi単射である」「 \varphi全射である」「  \varphi が双射である」「  \varphi が正則である」は同値である.

また,  n 次正方行列  A, B について, 「 A に対し  AB=I を満たす  B が存在するならば,  A全射である」「 A に対し  BA=I を満たす  B が存在するならば,  A単射である」が成立することから, ある行列  A が正則であるかどうかをみるのは,  AB=I, BA=Iのいずれか一方だけでよいことがわかる.

執筆中.  

参考文献: 笠原晧司著『線形代数学』(サイエンス社), 有馬哲著『線型代数入門』(東京図書)