代数1, 演習2.10.5
Reference: 雪江明彦『代数学1 群論入門』日本評論社, 2010.
もう解答をまとめたファイルを貼った方がいいような気もしてきましたが、演習2.10.5の解答をメモとして書いておきます。
問題(改変)
の指数 の部分群の数を求めよ. ただし は素数.
(解答) を の指数 の部分群とするとき, が可換だから で, は剰余群. だから は と同型である: よって, は を含み, と の指数 の部分群が対応する. ここまでは例題2.10.12と全く同じ.
例題2.10.12と同様に なのだが, ここは少し丁寧に書いておく. であるから,
ゆえに, の位数 の異なる部分群がいくつあるかを考察すればよい. は素数だから, このような部分群は巡回群であるので, 生成元を考察する.
[メモ①] 上式の最後の同型があまり直感的でない(と僕は思いました)が, 一般に ならば,
が成立つ. 証明だが, 帰納法によって の場合に帰着するので,
が全射準同型であることを示して, 準同型定理を使えばok. [メモ①終]
[メモ②] で剰余群を考えて, 定理2.10.2を使って, 考える対象を の部分群という概念にまで軽くしているのがポイント. この問題を解くまでは定理2.10.2をどう使うのか分からなかったけど, 決定的な効果を持っていることがよく実感できる. [メモ②終]
生成元が の場合, 実は の 個の が, それぞれ相異なる位数 の巡回群を生成する. 実際, 以下の2つのことから従う.
[1] に対し,
は相異なる.
実際, なら, で,
と が互いに素だから となる. いま だから が分かる.
[2] なら,
が成立つ.
実際, ならば, で, は と互いに素なので となる. より が従う.
[1][2]より, はすべて相異なり, の元のうち 個がこれらの部分群のいずれかに属する.
また, が生成する部分群 には, 上の 個の元とは異なる 個の元が属する.
ここまでで, 個の相異なる元については, それぞれの属する部分群を決定しているが, 残る を加えるとちょうど 個になる. したがって, だから, 部分群は以上の 個ですべてである.