而して

ノートとかメモとか。

複素積分の典型問題

 \displaystyle I = \int _ {0} ^ {2\pi} \dfrac{dt}{1-2a\cos{t} + a ^ 2}\ (|a|\neq 1)

 を求めたいと思います。大学1年生で習う  u = \tan{t} の置換でも解けますが、複素積分で解くと気持ち良いです。

(解答)

 I = \displaystyle \int _ {0} ^ {2\pi} {\dfrac{dt}{1-a(e ^ {it}+e ^ {-it})+a ^ 2}} =\int _ {0} ^ {2\pi} {\dfrac{-e^{it}}{ae ^ {2it} - (a ^ 2 + 1)e ^ {it} + a}dt}

 \displaystyle  = i\int _ {0} ^ {2\pi} {\dfrac{ie ^ {it}}{(ae ^ {it} - 1)(e ^ {it} - a)}}dt = i\int _ {\partial U(0,1)} {\dfrac{dz}{(az-1)(z-a)}}.

被積分関数を部分分数分解する. 

 \dfrac{A}{az-1} + \dfrac{B}{z-a} = \dfrac{1}{(az-1)(z-a)}

で両辺の分母を払えば, 

 A(z-a) + B(az-1) = 1

となるので,  z, 1 の係数を両辺で比較すれば, それぞれ  A+aB=0,  -aA-B=1 を得る. 行列で書けば, 

 {\left[ \begin{array}{cc}

1 & a \\

-a & -1

\end{array} \right]

\left[ \begin{array}{c}
A \\
B
\end{array} \right]

= \left[\begin{array}{c}
0 \\
1
\end{array}\right]
}

となる. 左辺の行列の行列式 -1 + a ^ 2 \neq 0 だから, 逆行列が存在して,

 {

\left[ \begin{array}{c}
A \\
B
\end{array} \right]

= \dfrac{1}{a ^ 2 - 1} \left[ \begin{array}{cc}

-1 & -a \\

a & 1

\end{array} \right]

\left[\begin{array}{c}
0 \\
1
\end{array}\right]

= \dfrac{1}{a ^ 2 - 1} \left[\begin{array}{c}
-a \\
1
\end{array}\right]

}

となるから, 結局,

 \displaystyle I = \dfrac{-ia}{a ^ 2 - 1} \underline{\int _ {\partial U(0,1)} {\dfrac{dz}{az-1}}} _ {J} + \dfrac{i}{a ^ 2 - 1} \underline{\int _ {\partial U(0,1)} {\dfrac{dz}{z-a}}} _ {K}.

 D = \overline{U(0,1)} とおく. ここで  |a| \leqq 1 \land |1/a| \leqq 1 \Leftrightarrow |a|=1 だから, (a)  a \in D \land 1/a \notin D, (b)  a \notin D \land 1/a \in D のどちらか一方が成立するので,  |a| \neq 1 のもとで場合を分ける.

(a) すなわち  |a| \lt 1 のとき.  1/a \notin D だから,  D ^ {\circ} 上で  \dfrac{1}{az-1} が正則となるので, Cauchyの定理から  J = 0.  K = 2\pi i だから,  I = \dfrac{2\pi}{1 - a ^ 2}.

(b) すなわち  |a| \gt 1 のとき.  a \notin D だから,  D ^ {\circ} 上で  \dfrac{1}{z-a} が正則となるので, Cauchyの定理から  K = 0.  J = 2\pi i / a だから,  I = \dfrac{2\pi}{a ^ 2 - 1}. (答)

さて、何が気持ち良いのかというと、  |a| \neq 1 というひとつの条件が, ①  a, 1/a の両方が  U(0,1) に属さないこと②連立方程式の解の存在条件になっていることーという二つの有用な結果をもたらしているところで、この相性の良さは複素積分を経た計算でないと実感できない。この問題を作ることはいつの時代であっても出来たはずなのに、この  |a| \neq 1 という仮定の効用は、「複素積分」という概念がなければ知ることができない。その点で、この定積分には先験的に複素積分という概念が埋め込まれていて、複素積分を使って解かれるのを待っていたかのようにも思える。そこが面白い。

シグマの掛け算

 \displaystyle  \left(\sum _ {i=0} ^ {M} {a _ i}\right)\left(\sum _ {j=0} ^ {N} {b _ j}\right) = \sum _ {n=0} ^ {M+N} {\sum _ {\substack{i+j=n \\ 0 \leqq i \leqq M \\ 0 \leqq j \leqq N}} {a _ i b _ j}}

という公式を見ると少し尻込みしますが、案外大切な公式(特に  M, N \to \infty を考えるとき)なので、メモをしておきます(Googleで調べてみたけど意外と記事がなかった)。

まず、一般に  \displaystyle \sum _ {(i,j) \in D} {a _ {ij}} というのは、「 (i,j) \in D なるすべての  i, j に対する  a _ {ij} の和」という意味です。集合  D を決定する条件のみを書くときもあります。今の場合は  D = \{(i,j)\ |\ i + j = n \land i, j \geqq 0\} の条件のみを記している、ということになります。

冒頭の公式は式からではなく、座標平面から理解すると良いです。左辺は  \displaystyle \sum _ {i=0} ^ {M} \sum _ {j=0} ^ {N} {a _ i b _ j} ですから、 (0,0) から  (M,N) までのすべての格子点  (i,j) について和をとるということです。

例えば、図では  M=5, N=4 の場合で、このときなら  6\times 5 = 30 個の格子点について和をとるということになります(添字が0からスタートしていることに注意)。

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冒頭の公式は、要するに和の取り方を変えているだけです。図のように傾き -1 の直線を、 30 個すべての格子点が埋まるように引くとき、直線は  i+j = 0,\ i+j = 1,\ \cdots,\ i+j=M+N=9 だけ必要になります。そこで、右辺の  0, 1, \cdots, M+N n でパラメータ化して、その直線ごとに  a _ i b _ j の和を取っているだけなのです。

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 特に  \displaystyle c_n = \sum _ {\substack{i+j=n \\ 0 \leqq i \leqq M \\ 0 \leqq j \leqq N}} {a _ i b _ j} とおいて、 \displaystyle \sum _ {i=0} ^ {\infty} {a _ i},\ \sum _ {j=0} ^ {\infty} {b _ j},\ \sum _ {n=0} ^ {\infty} {c _ n} が(何らかの方法で)すべて収束すると分かっている場合には、冒頭の公式の両辺で  M, N \to \infty として、

 \displaystyle  \left(\sum _ {i=0} ^ {\infty} {a _ i}\right)\left(\sum _ {j=0} ^ {\infty} {b _ j}\right) = \sum _ {n=0} ^ {\infty} {c _ n}

となります。二つの無限級数の積が一つの無限級数になり得るという点で重要です。

フェルマーの小定理

どこかの予備講師が授業終了前10分で証明してたと聞いたことがあって、俺もやりたくなった。

素数  p の倍数でない整数  a に対し,  a ^ {p-1} \equiv 1\ \mathrm{mod}\ p.

(証明)  k = 1, \cdots, p-1 に対して  ka p で割った余りを  r _ k とするとき,  ka p で割り切れないので,  1 \leqq r _ k \leqq p-1.

次に,  r _ 1, \cdots, r _ {p-1} が相異なることを示す:  i \neq j ならば  r _ i \neq r _ j.

対偶を示す.  r _ i = r _ j なら  ia \equiv ja \Leftrightarrow a(i-j) \equiv 0\ \mathrm{mod}\ p で,  a p は互いに素だから  i - j \equiv 0 \Leftrightarrow i \equiv j\ \mathrm{mod}\ p となるが,  1 \leqq i, j \leqq p-1 だから  i=j.

したがって,  r _ 1 r _ 2 \cdots r _ {p-1} は相異なる  p-1 個の  1 \leqq r _ k \leqq p-1 の積だから  (p-1)! に等しい. よって,

 (p-1)! a ^ {p-1} = a(2a)\cdots((p-1)a) \equiv r _ 1 r _ 2 \cdots r _ {p-1} = (p-1)!\ \mathrm{mod}\ p

から  (p-1)!(a ^ {p-1}-1) \equiv 0\ \mathrm{mod}\ p であり,  (p-1)! p と互いに素だから  a ^ {p-1} \equiv 1\ \mathrm{mod}\ p. (終)

代数1, 演習2.10.5

Reference: 雪江明彦『代数学1 群論入門』日本評論社, 2010.

もう解答をまとめたファイルを貼った方がいいような気もしてきましたが、演習2.10.5の解答をメモとして書いておきます。

問題(改変)

 G = \mathbb{Z} ^ 2 の指数  p の部分群の数を求めよ. ただし  p素数.

(解答)  H G の指数  p の部分群とするとき,  G が可換だから  H \triangleleft G で,  G/H は剰余群.  (G:H) = p だから  G/H \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} と同型である:  G/H \cong \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}. よって,  H pG を含み,  H G/pG の指数  p の部分群が対応する. ここまでは例題2.10.12と全く同じ.

例題2.10.12と同様に  G/pG \cong \mathbb{Z} / p\mathbb{Z} \times \mathbb{Z} / p \mathbb{Z} なのだが, ここは少し丁寧に書いておく.  pG = p\mathbb{Z} ^ 2 \cong p\mathbb{Z} \times p \mathbb{Z} であるから,

 G / pG \cong (\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}) / (p\mathbb{Z} \times p\mathbb{Z}) \cong \mathbb{Z} / p\mathbb{Z} \times \mathbb{Z} / p \mathbb{Z}.

ゆえに,  (\mathbb{Z} / p\mathbb{Z}) ^ 2 の位数  p の異なる部分群がいくつあるかを考察すればよい.  p素数だから, このような部分群は巡回群であるので, 生成元を考察する.

[メモ①] 上式の最後の同型があまり直感的でない(と僕は思いました)が, 一般に  H _ i \triangleleft G _ i ならば,

 (G _ 1 \times \cdots \times G _ n) / (H _ 1 \times \cdots \times H _ n) \cong (G _ 1 / H _ 1) \times \cdots \times (G _ n/H _ n)

が成立つ. 証明だが, 帰納法によって  n = 2 の場合に帰着するので,

 \phi : G _ 1 \times G _ 2 \ni (g _ 1, g _ 2) \mapsto (g _ 1 H _ 1, g _ 2 H _ 2) \in (G _ 1/H _ 1) \times (G _ 2 / H _ 2)

全射準同型であることを示して, 準同型定理を使えばok. [メモ①終]

[メモ②]  pG で剰余群を考えて, 定理2.10.2を使って, 考える対象を  (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}) ^ 2 の部分群という概念にまで軽くしているのがポイント. この問題を解くまでは定理2.10.2をどう使うのか分からなかったけど, 決定的な効果を持っていることがよく実感できる. [メモ②終]

生成元が  (m\ \mathrm{mod}\ p, 1\ \mathrm{mod}\ p) の場合, 実は  m = 0, \cdots, p - 1 p 個の  m が, それぞれ相異なる位数  p巡回群を生成する. 実際, 以下の2つのことから従う.

[1]  0 \leqq m \leqq p-1 に対し,

 m \ \mathrm{mod}\ p, 2m \ \mathrm{mod}\ p, \cdots, (p-1)m \ \mathrm{mod}\ p, 0\ \mathrm{mod}\ p

は相異なる.

実際,  im\ \mathrm{mod}\ p = jm\ \mathrm{mod}\ p なら,  im - jm = m(i-j) \equiv 0 \mod p で,

 m p が互いに素だから  i -j \equiv 0 \mod p となる. いま  0 \leqq i, j \leqq p - 1 だから  i = j が分かる.

[2]  0 \leqq m, n \leqq p - 1,\ m \neq n なら,

 m\ \mathrm{mod}\ p \neq n\ \mathrm{mod}\ p,\ \cdots,\ (p-1)m\ \mathrm{mod}\ p \neq (p-1)n\ \mathrm{mod}\ p

が成立つ.

実際,  im\ \mathrm{mod}\ p = in\ \mathrm{mod}\ p ならば, i(m-n) = im - in \equiv 0 \mod p で,  i p と互いに素なので  m \equiv n \mod p となる.  0 \leqq m, n \leqq p - 1 より  m = n が従う.

[1][2]より,  \langle (m\ \mathrm{mod}\ p, 1\ \mathrm{mod}\ p) \rangle \ (m = 0, \cdots, p-1) はすべて相異なり,  (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}) ^ 2 の元のうち  (p-1) \times p = p(p-1) 個がこれらの部分群のいずれかに属する.

また,  (1\ \mathrm{mod}\ p, 0\ \mathrm{mod}\ p) が生成する部分群  \langle (1 \ \mathrm{mod}\ , 0\ \mathrm{mod}\ p) \rangle には, 上の  p(p-1) 個の元とは異なる  (p-1) 個の元が属する.

ここまでで,  p(p-1) + (p-1) = p ^ 2 - 1 個の相異なる元については, それぞれの属する部分群を決定しているが, 残る  (0\ \mathrm{mod}\ p, 0\ \mathrm{mod}\ p) を加えるとちょうど  (p ^ 2 - 1) + 1 = p ^ 2 個になる. したがって,  \left| (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}) ^ 2 \right| = p ^ 2 だから, 部分群は以上の  \boldsymbol{ p + 1 } ですべてである.

曲のキーの探し方メモ(初心者向け)

耳コピがしたくてネットを色々探し回って、曲のキーの探し方がなんとなく分かったのでメモ。

① (メジャー)ペンタトニックスケールを覚える

② 曲の一部を聴いて、一番低い音を4つくらい確定させる

③ ペンタトニックスケールの6弦の間隔からキーを絞り込む

④ 曲に合わせて③のペンタトニックを弾く

耳コピに限らず、教養として覚えた方が良い。

② 感覚的だが、一番低い音は意識すると分かるようになる。曲に合わせて「ボン、ボン」と6弦を鳴らしてみて、合う音を見つける。聞き取りにくかったら別の場所にいって、総じて4つの音くらいを聞き取れたらok。

③ 例えば、拾った低音に5フレット、7フレット、9フレットのものが含まれていたとすると、間隔が「2、2」であることに着目してペンタトニックの形をどういうふうに合わせればよいか絞り込むことができる。この例の場合はAだと思う(④で試してみる)。

④ ③で絞ったキーのペンタトニックを実際に曲に合わせて雑にポンポンと鳴らす。キーと合っていれば「合っている」と分かる。例として、back numberの「水平線」なら多分G#、コクリコ坂の「朝ごはんの歌」とか「上を向いて歩こう」なら多分Cだし、コレサワの「たばこ」なら多分Eで、「帰りたくないって」なら多分A#、カゲプロの「サマータイムレコード」なら多分A(アルファベットは、ペンタトニックの形を言っているだけで、実際のキーがメジャーかマイナーかを意識していない、メジャーorマイナーは曲の印象から当てる)。実際に鳴らしてみるとすぐ分かる。

慣れてくるとコード進行でもう分かるらしいが、いきなりコード進行からというのは難しかった。何を練習するにしても答え合わせの反復が必要だと思うし、「こういう曲はこのキーか」というのを繰り返し繰り返し判定していって、いつかコード進行で判定できるようになれば良いのかな、と思う。少なくとも、慣れれば上の方法でもすぐにキーが分かるし、今のところ不便はない。