而して

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シグマの掛け算

 \displaystyle  \left(\sum _ {i=0} ^ {M} {a _ i}\right)\left(\sum _ {j=0} ^ {N} {b _ j}\right) = \sum _ {n=0} ^ {M+N} {\sum _ {\substack{i+j=n \\ 0 \leqq i \leqq M \\ 0 \leqq j \leqq N}} {a _ i b _ j}}

という公式を見ると少し尻込みしますが、案外大切な公式(特に  M, N \to \infty を考えるとき)なので、メモをしておきます(Googleで調べてみたけど意外と記事がなかった)。

まず、一般に  \displaystyle \sum _ {(i,j) \in D} {a _ {ij}} というのは、「 (i,j) \in D なるすべての  i, j に対する  a _ {ij} の和」という意味です。集合  D を決定する条件のみを書くときもあります。今の場合は  D = \{(i,j)\ |\ i + j = n \land i, j \geqq 0\} の条件のみを記している、ということになります。

冒頭の公式は式からではなく、座標平面から理解すると良いです。左辺は  \displaystyle \sum _ {i=0} ^ {M} \sum _ {j=0} ^ {N} {a _ i b _ j} ですから、 (0,0) から  (M,N) までのすべての格子点  (i,j) について和をとるということです。

例えば、図では  M=5, N=4 の場合で、このときなら  6\times 5 = 30 個の格子点について和をとるということになります(添字が0からスタートしていることに注意)。

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冒頭の公式は、要するに和の取り方を変えているだけです。図のように傾き -1 の直線を、 30 個すべての格子点が埋まるように引くとき、直線は  i+j = 0,\ i+j = 1,\ \cdots,\ i+j=M+N=9 だけ必要になります。そこで、右辺の  0, 1, \cdots, M+N n でパラメータ化して、その直線ごとに  a _ i b _ j の和を取っているだけなのです。

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 特に  \displaystyle c_n = \sum _ {\substack{i+j=n \\ 0 \leqq i \leqq M \\ 0 \leqq j \leqq N}} {a _ i b _ j} とおいて、 \displaystyle \sum _ {i=0} ^ {\infty} {a _ i},\ \sum _ {j=0} ^ {\infty} {b _ j},\ \sum _ {n=0} ^ {\infty} {c _ n} が(何らかの方法で)すべて収束すると分かっている場合には、冒頭の公式の両辺で  M, N \to \infty として、

 \displaystyle  \left(\sum _ {i=0} ^ {\infty} {a _ i}\right)\left(\sum _ {j=0} ^ {\infty} {b _ j}\right) = \sum _ {n=0} ^ {\infty} {c _ n}

となります。二つの無限級数の積が一つの無限級数になり得るという点で重要です。