陰関数定理
笠原先生の『微分積分学』(サイエンス社)の陰関数定理の証明の整理.
Them. (陰関数定理)
の領域 で連続な2変数関数 があって, の1点 の近傍 で, について偏微分可能で, は で連続であるとする.
もし, で なら, の十分小さい近傍 で,
なる連続関数 が唯一つ存在する.
の近傍を , の近傍を とする. しかして, なるようにする.
という逐次近似を想定して,
とおこう. 不動点定理から, なる を導けばよいのだが, そのために少しく準備をしておく:
とおいておく. の範囲をせばめていって, それを とするとき, が の縮小写像で, かつ が完備になるようにしたい. その をどう決めるかはちょっと後回しにして, まずは, と の差について考えてみよう.
であり, Lagrangeの平均値の定理より,
なる が, と の間にとれる.
しかるに, は で連続だから, にいくらでも近づけられるし, さらに, が連続であることから, これは , つまり にいくらでも近づけられる.
これら2点をかんがみて, を次にように変形する:
そこで, を と閉区間にしておく. しかして, を, なる, から への連続関数 全体の集合と定める. そうすれば, が の写像であることを示すために任意に をとるとき,
が成り立つ. を示すには, これを元手に をいえばよいことになるが, に を代入して,
最右辺はいくらでも小さくできるのだから, もちろん 以下にもできる. ゆえに, は の写像であることがわかった.
次に, が縮小写像であることを示す. 任意に をとって進もう:
しかるに, 平均値の定理によって
なる が と の間に存在する.
上でも述べた通り, はいくらでも に近づけられるのだから,
の下線部は よりも小さくできる. つまり,
で, 両辺で をとれば,
がしたがう. これは が縮小写像であることに他ならない.
最後に が完備であることをいう. ただ, だから, でCauchy列をつくれば, それは収束列にはなる. その極限関数を としたとき, であることも分かる.
残る問題は であるかどうかなのだが, たとえば任意に をとって, を固定して をみていくとき, を閉区間としてとっておいたから この を でいろいろ変えても結論は変わらないのだから, 関数列 の各点収束先 は に属する. しかして, で, であるのに でない, などということはありえないから, かつ ゆえ よって は完備でなければならない.
以上の推論から, 不動点定理が使える. すなわち, いまの を とすれば,
なる が, 唯一つ存在する. 終
さらに, が について偏微分可能ならば, は で微分可能で,
は偏微分可能であって, 少なくとも は で連続だから, は で微分可能であって,
なる, で連続な関数 がある. しかるに, から,
であり, いま は で連続, かつ より, 十分小さい近傍 をとれば, とできる.
このとき,
であって, は で連続だから, は で微分可能で,
終